部屋の隅にある本棚から、古びた単行本を手に取る。指先でなぞる、少し色褪せた背表紙。ページをめくると、インクと古い紙の、あの懐かしい匂いがふわりと香る。そうだ、僕が「マンガを読む」という行為に夢中になったのは、いつからだっただろうか。
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子供の頃は、なけなしのお小遣いを握りしめて本屋に走り、発売日を指折り数えて待っていた。家に帰る時間すらもどかしくて、公園のベンチで夢中になって読んだものだ。親に隠れて、布団の中で懐中電灯の小さな明かりを頼りにページをめくった夜。ドキドキしたのは、物語の展開だけじゃなく、いつ親に見つかるかというスリルもあったかもしれない。
学生時代は、通学の満員電車の中が僕だけの特別な空間だった。周りの喧騒が嘘のように遠のき、気づけば僕は、主人公と一緒に汗を流し、拳を握りしめ、仲間との絆に涙していた。友達との貸し借りで、回し読みしたマンガの感想を熱く語り合った休み時間。あの頃は、マンガの中のキャラクターたちの悩みや葛藤が、不思議と自分のことのように感じられた。彼らの成長が、僕自身の成長と重なって見えたんだ。
大人になった今、マンガを読むスタイルは変わった。紙の単行本ではなく、スマホやタブレットの画面をスワイプすることが多くなった。いつでもどこでも、何千冊もの物語にアクセスできるのは、間違いなく便利だ。仕事のストレスや、日々のやるせなさから逃れるように、夜寝る前にデジタルのページをめくる。
でも、本質は何も変わっていない。
息をのむような戦闘シーン。胸が締め付けられるような切ない恋愛模様。思わず声を出して笑ってしまうような、くだらないギャグ。そして、何十巻も続いた物語が、ついに終わりを迎える時の、あの寂しさ。まるで、長年の親友と別れるような、心にぽっかりと穴が開いたような感覚。
結局のところ、「マンガを読む」という行為は、単なる暇つぶしじゃない。それは、自分の知らない感情や、経験したことのない人生に触れるための、短いけれど、かけがえのない旅なのだ。たった数百円で、僕たちはヒーローにも、魔法使いにも、悲劇のヒロインにもなれる。だから僕は、きっとこれからも、この小さな紙の窓から、果てしない物語の世界へと旅立ち続けるのだろう。